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日々の芥

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ローレンス・ブロックマット・スカダーシリーズに”聖なる酒場の挽歌”という作品がある。シリーズの中でも分岐点という感じで、アルコール中毒治療をしている主人公が、飲んでいた時代を語るスタイルだ。私がシリーズ中で最も好きな作品のひとつだ。
この作品のなかで、印象的に使われるのが、Dave Van Ronkの”Last Call”という唄。
”生まれたときに もし酔っていたら 悲しみなんて 知らずにすむのに”
という唄に二人の酔っ払いが黙り込んでしまうシーンが、心に沁みる。

入手しやすいのは、"Going Back to Brooklyn"に入っているテイク。

私は、最初に再発されたCDを持っているが、これを入手した頃付き合っていたガールフレンドと食事に行くたびに、何年も探していたCDを発見するジンクスがあったことを思い出す。

Going Back to Brooklyn Going Back to Brooklyn
Dave Van Ronk (2006/07/25)
Hightone
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実際に作品に使用されているのは、1973年リリースの”Songs For Ageing Children”のテイクだが、そちらはCD化されていない。
マット・スカダーシリーズはこれ以降、主人公はある意味でまともな市民になっていくので、それはそれで面白い。最新刊を読む限り、シリーズは完了なのだろうか。
聖なる酒場の挽歌 / ローレンス ブロック
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発売日に届いてはいたのだが、時間がとれなかったり、風邪を引いて寝込んでいたりしてなかなか読み進まなかったのだが、半分を過ぎたところからは一気に一晩で読了。

かれこれ、20年もこの沈欝な主人公と付き合ってきたので、もはや、ニューヨークのどこかに彼が存在していて、その近況報告を読んでいるような気になる。
もはや、”八百万の死にざま”のように、拳銃で終わりにすることもできず、"墓場への切符"のように、拳でケリもつけられない。もう彼も60代後半で、探偵仕事はもはや引退寸前、妻の不動産収入で暮らし、AAに通い、暇な時は妻の画廊の店番をする。悠々自適の暮らしなのだ。
ファンとしては、もう一度、カタルシスを味わいたいのだが、もはやエレインの死しかあるまい。だが、それは読みたくもあり、読みたくもなし。いや、原題の”All The Flowers Are Dying"からしてそれを暗示しているようで、怖かったのだ。その意味で本作がスカダーの最後となっても仕方ない。

911以降の喪失感が、何故これほど共感できるのか不思議だ。あの出来事で確実に私は何かを失った。鋭利なナイフで切り裂いたように、外からは見えないほど薄いが、深い傷だ。そして、今もその隙間を埋められずにいる。

個人的には、”聖なる酒場の挽歌”に次ぐ作品だ。

すべては死にゆく すべては死にゆく
ローレンス ブロック (2006/12)
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追記
しかし、最後まで犯人の名前がわからないというのも凄いなあ。戸籍制度にならされているとわからないけど、本人確認のシステムってどうなっているんだろう。
月末に、ローレンス ブロックの新作が出るらしいので、前作を読み返し中。
スカダーシリーズの魅力は、初期はアル中探偵の虚無感だったが、最近は、エレインとスカダーのちょっとしたやり取りや、同時代感に移ってきたような気がする。今回は911のあとでもあるので、その辺りが楽しみだ。

死への祈り 死への祈り
ローレンス ブロック (2002/10)
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